"2026年のベトナム不動産市場は、実需に基づいた「手頃な価格」と環境性能を重視した「持続可能性」が鍵となる新サイクルへ移行。投機的な成長から、より安定的で持続可能な成長を目指す市場へと変化しており、デベロッパーには戦略転換が求められている。"
2026年のベトナム不動産市場は、過去の投機的な成長から、より安定的で持続可能な成長を目指す新たなサイクルへと移行しつつある。この新サイクルを定義する2つのキーワードが、「手頃な価格(Affordability)」と「持続可能性(Sustainability)」だ。市場の主役は、実需に基づいた購入者へと移り、彼らのニーズに応えることができないデベロッパーは淘汰される時代が始まっている。

月収2,000万VNDの中所得層でも、10億VNDの物件購入で返済比率が35%に達する。
「手頃な価格」の壁
近年の不動産価格高騰により、特にホーチミン市やハノイ市では、平均的な所得層にとって住宅購入が極めて困難になっている。例えば、10億VND(約600万円)の物件を金利6.5%の25年ローンで購入した場合、月々の返済額は約700万VNDとなる。これは、月収2,000万VNDの中所得層にとって、収入の35%を占める重い負担だ。国際的な基準では、この返済比率は30%以下が望ましいとされており、多くの市民が「買いたくても買えない」状況に陥っている。この課題に対応するため、政府は社会住宅や手頃な価格の商業住宅の開発を奨励しているが、供給は依然として需要に追いついていない。
「持続可能性」への関心の高まり
もう一つの重要なトレンドが、環境への配慮やエネルギー効率を重視した「グリーンビルディング」への関心の高まりだ。購入者は、単に住む場所としてだけでなく、長期的な資産価値や、光熱費などのランニングコスト、そして健康的な生活環境を重視するようになっている。太陽光発電システムの設置、雨水利用システム、断熱性の高い建材の使用など、環境性能の高いプロジェクトは、販売価格が多少高くても、市場で高い評価を得る傾向にある。国際金融公社(IFC)の調査によると、ベトナムのグリーンビルディング市場は、2030年までに約800億ドルの規模に達する可能性があるという。
デベロッパーへの示唆
この新サイクルにおいて、不動産デベロッパーは戦略の転換を迫られている。これまでの高級物件中心の開発から、中間層をターゲットとした手頃な価格帯のプロジェクトへとポートフォリオを多様化させる必要がある。同時に、設計段階から「持続可能性」を組み込み、エネルギー効率が高く、環境に配慮した付加価値の高い住宅を提供することが、競争優位性を確立するための鍵となるだろう。



