"2026年3月1日より、ベトナムのすべての不動産に固有の「識別コード」が割り当てられ、取引履歴・担保設定・都市計画情報などが国家データベースで一元管理される新制度がスタート。長年の課題だった「二重価格」問題の解消が期待され、投機的取引の抑制と海外投資家のデューデリジェンス効率化にも貢献する画期的な制度改革。"
不動産識別コード制度が3月1日施行—デジタル化で市場透明性向上へ
2026年3月4日
ハノイ – ベトナムの不動産市場が、大きな転換点を迎えている。2026年3月1日より、すべての不動産資産に個別の「識別コード」を割り当て、国家土地データベースに統合する新制度が施行された。専門家は、この制度が市場の透明性を飛躍的に高め、持続可能な発展の礎となると見ている。
すべての不動産に「電子プロファイル」を付与
新制度では、土地、アパート、戸建て住宅など、すべての不動産資産に固有の識別番号が付与される。このコードには、土地使用権、都市計画情報、過去の取引履歴、抵当権設定状況、さらには税務上の義務といった、あらゆる情報が紐づけられる。
これまで、これらの情報は各行政機関に散在し、手作業での管理が中心だった。新制度により、すべての情報が一元的にデジタルプラットフォーム上で管理・更新されることになり、いわば不動産の「電子プロファイル」が作成されることになる。

写真: 土地使用権証明書(写真提供: cafebiz.vn)
二重価格問題の解消と市場の健全化に期待
ベトナム不動産市場では、長年にわたり、実際の取引価格よりも低い価格を申告する「二重価格」問題が横行してきた。これは、税金逃れを目的としたもので、市場の実態を不透明にする大きな要因となっていた。
新制度では、すべての取引が識別コードの下で登録・更新されるため、当局はエリアや物件種別ごとの正確な取引価格をリアルタイムで把握できるようになる。これにより、申告価格と市場価格の乖離は徐々に是正され、市場の健全化が進むと期待されている。
国家財政金融政策諮問評議会のメンバーであるカン・ヴァン・ルック博士は、「資産の識別は、全国規模でクリーンかつ統一されたデータベースを構築し、税務管理の効率を高め、国家予算の損失を減らすのに役立つ」と述べている。
投機から実需へ、投資行動の変化を促進
情報の透明化は、投資家の行動にも変化を促すだろう。これまでは、根拠のない噂や期待感に基づいた投機的な取引が、局地的な価格高騰(ランドフィーバー)を引き起こす一因となっていた。
今後は、計画情報、法的地位、取引履歴などが識別コードを通じて公的にアクセス可能になるため、投資家は憶測ではなく、事実に基づいた分析に基づいて投資判断を下すようになる。サヴィルズ・ハノイのディレクター、マシュー・パウエル氏は、「短期的な価格高騰は抑制され、確かなインフラ計画と明確な都市計画に裏打ちされたエリアに資金が向かうだろう」と予測する。
考察
不動産識別コード制度の導入は、ベトナムがデータ駆動型のガバナンスへと移行する明確な意思表示であり、不動産市場のデジタルトランスフォーメーション(DX)における重要な一歩と言える。
この制度が成功裏に機能すれば、市場の透明性が向上し、汚職や不正のリスクが大幅に減少するだろう。また、金融機関にとっては、担保評価の迅速化や信用リスクの低減につながり、より健全な不動産ファイナンス市場の形成が期待できる。さらに、海外の機関投資家にとっても、デューデリジェンスの効率化や取引コストの削減は、ベトナム市場への長期的な資金流入を促進する大きな魅力となるはずだ。
一方で、課題も残る。膨大な量の既存不動産データをいかに正確にデジタル化し、データベースを維持・更新していくか。また、国民への制度の周知徹底と、円滑な運用体制の構築も不可欠だ。この壮大なデジタル化プロジェクトを成功に導けるか、ベトナム政府の手腕が問われている。
参照:
- [1] Property identification code seen as catalyst for real estate digitalisation - Vietnam+ (VietnamPlus) https://en.vietnamplus.vn/property-identification-code-seen-as-catalyst-for-real-estate-digitalisation-post338469.vnp



