GrabとBeが相次いで料金値上げ:ベトナムのライドヘイリング市場が補助金競争から収益性重視フェーズへ転換
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ニュース 2026年5月9日 3分で読めます

GrabとBeが相次いで料金値上げ:ベトナムのライドヘイリング市場が補助金競争から収益性重視フェーズへ転換

"ベトナムのライドヘイリング大手GrabとBeが相次いで料金改定を発表した。Grabはバイクの1回あたりプラットフォーム手数料を3,000VNDに引き上げ、四輪車も5,000〜19,000VNDの値上げを実施。Beは5年間据え置いていた料金体系を2026年5月8日から改定し、四輪車の最低料金を31,5..."

ベトナムのライドヘイリング大手GrabとBeが相次いで料金改定を発表した。Grabはバイクの1回あたりプラットフォーム手数料を3,000VNDに引き上げ、四輪車も5,000〜19,000VNDの値上げを実施。Beは5年間据え置いていた料金体系を2026年5月8日から改定し、四輪車の最低料金を31,501〜31,704VNDに設定した。背景には燃料費の高騰や新たな最低報酬率の引き上げがあり、市場は従来の補助金競争から収益性重視のフェーズへと転換しつつある。

背景・経緯

Data Chart
Source: Vietnam Insight Analysis

ベトナムのライドヘイリング市場はここ数年、激しい価格競争と補助金合戦が続いてきた。GrabやBe、GoViet(現在はGrabに統合)などのプラットフォームは、ユーザー獲得とドライバー確保のために大規模な割引やプロモーションを展開し、市場シェアの拡大を図ってきた。特にバイクタクシー市場はベトナムにおける主要な交通手段であり、低価格でのサービス提供がユーザーの支持を得るカギとなっていた。たとえば、Grabは2021年時点でバイク配車サービスにおいて市場シェア約60%超を占める圧倒的な存在感を示してきた。一方、Beは地元資本を背景に割安な料金設定と地域密着型のサービスで一定の支持を獲得し、競争は激化していた。

しかし、こうした補助金依存型の競争には限界があった。燃料費の高騰はドライバーの収益を圧迫するとともに、運営コスト全体の増加を招いた。また、ベトナム政府は労働環境の改善や公正な報酬の確保を目的とし、2026年から大統領令No.27/2026を施行。この大統領令では、ライドヘイリングドライバーへの最低報酬率を92%以上に引き上げることが義務付けられ、プラットフォーム企業は報酬コストの増加を避けられない状況となった。さらに、安全性やサービス品質向上の要求も高まり、ドライバーの労働環境改善が社会的課題として浮上している。

こうした環境変化を受け、GrabとBeは従来の「補助金・プロモーション依存」モデルから脱却し、収益性を重視した持続可能なビジネスモデルへと転換を図っている。Grabはベトナム市場における二輪車シェアが61%と圧倒的な強みを持つことから、プラットフォーム手数料の引き上げにより収益拡大を狙う方針を打ち出した。一方Beも、5年間据え置いてきた料金体系を改定し、燃料価格高騰と最低報酬率引き上げに対応する形で料金の見直しを実施した。

また、電動バイクサービスの台頭も市場構造を変えつつある。Xanh SMなどの新興プレイヤーが電動バイクを活用したサービス展開を強化し、環境規制の強化や消費者の環境意識の高まりも相まって、プラットフォーム各社はサービスの質向上と環境対応の両面で競争を迫られている。これにより、単なる価格競争から脱却し、サービス価値や持続可能性を重視するフェーズへと市場は移行している。

具体的な内容・数値データ

Grabの料金改定詳細

Grabは2026年第1四半期の決算発表に合わせて料金改定を実施した。バイクのプラットフォーム手数料を1回あたり3,000VNDに引き上げ、四輪車については地域やサービス区分に応じて5,000〜19,000VNDの値上げを行った。この改定は全体として10〜20%程度の料金上昇を意味し、特に都市部の需要が高いエリアでの料金調整が目立つ。

Grabの2026年第1四半期決算によれば、売上高は前年比24%増の9.55億ドルに達し、純利益は前年同期比467%増の1.36億ドルと大幅な伸びを示した。モビリティ部門の収益は前年比19%増、一方でオンデマンドGMV(総取引額)は24%増の61億ドルを記録し、市場の成長性と収益性の改善が同時に進行していることが窺える。これらの数字は、料金改定による収益強化策が効果を発揮しつつあることを示している。

Beの料金改定詳細

Beは5年間据え置いていた料金体系を2026年5月8日付で改定し、四輪車の最初の2kmにかかる最低料金を31,501〜31,704VNDに引き上げた。これは従来料金より15〜20%の増加に相当し、燃料費高騰や最低報酬率引き上げに対応した措置である。Beは市場においてGrabに次ぐシェアを獲得しており、慎重かつ段階的に料金改定を実施している点が特徴的だ。

Beの料金改定は大きな値上げではないものの、ユーザーにとっては利用コストの上昇を意味し、サービスの質や利便性向上による価値提供が求められる局面にある。

市場構造と料金動向

ベトナムのライドヘイリング市場においては、二輪車が市場全体の約61%を占めており、Grabの二輪車シェアは特に高い。四輪車市場ではGrabとBeの2強が中心であるが、価格競争は徐々に収束しつつある。一方、Xanh SMをはじめとする電動バイクサービスのシェアはまだ約5〜10%と小さいが、成長率は高く、今後数年で存在感を強めると予想される。

料金改定は単なる値上げではなく、プラットフォーム企業が持続可能な収益モデルを模索する過程で行われている。補助金やプロモーション費用の削減は収益改善の重要な鍵であり、今後も同様の動きが他のプレイヤーにも波及する可能性が高い。消費者の価格感度は依然として高いものの、サービス品質や安全性の向上を求める声も強まっており、価格とサービスのバランスが市場競争の焦点となる。

専門家・関係者の見解

ライドヘイリング市場の専門家は今回の料金改定を「市場成熟の証」と評価している。ベトナム交通経済研究所のグエン・ティ・リン氏は、「これまではユーザー獲得のために価格競争が激化してきたが、政府の最低報酬率引き上げにより、プラットフォーム企業は収益確保に舵を切らざるを得なくなった。これは健全な市場発展のために必要なステップだ」と指摘する。

また、ドライバー側からは歓迎の声も上がっている。ドライバー組合の代表は、「燃料費や生活費の上昇が続く中で、最低報酬率の引き上げは労働環境の改善につながる。料金改定はやむを得ない」との認識を示し、労働者の生活安定に寄与することを期待している。

一方、消費者の反応は分かれている。料金上昇により利用頻度を減らすユーザーもいる一方で、「安全性やサービス品質の向上を評価し、料金上昇はやむを得ない」と受け止める層も存在する。市場全体としては、価格とサービス価値のバランスを模索しながら成長していく過程にあるとみられている。

日本企業にとっての意味

今回の料金改定は、ベトナムのライドヘイリング市場が成長期から成熟期へと移行しつつあることを示す重要なサインであり、日本企業や投資家にとっても多くの示唆を含んでいる。

まず、補助金競争に依存した短期的な市場拡大モデルは限界を迎え、持続可能な収益モデルの構築が不可欠となったことを理解する必要がある。日本企業がベトナム市場に参入・進出する際には、単純な低価格競争ではなく、サービスの質やドライバー待遇の改善、環境対応といった非価格競争要素を重視した戦略設計が求められる。これにより、長期的な顧客ロイヤルティやブランド価値の向上につなげられる可能性が高い。

また、ベトナムの二輪車市場が市場全体の61%を占める特徴を踏まえると、電動バイクや環境対応技術に注目が集まっている現状は、日本の電動モビリティ関連企業や部品メーカーにとって新たなビジネスチャンスとなり得る。例えば、バッテリー技術やモーター、制御システムなどの高度な技術を提供し、現地パートナーとの連携を強化することで、競争優位性を獲得できる可能性がある。

さらに、Grabの好調な決算はベトナム市場の成長ポテンシャルを示すと同時に、競争激化の中での収益改善策の成功例として参考になる。日本の投資家は、規制動向や競争環境の変化を注視しながら、長期的な視点での投資判断を行うことが重要だ。特に、サービスの差別化要素や持続可能なビジネスモデルを有する企業に対する投資魅力が高まると予想される。

また、今後は企業向けモビリティソリューションやサブスクリプションサービスなど、多様な収益モデルが登場する可能性があるため、日本企業はこれらの新たなサービス形態にも注目し、ビジネス機会の拡大を図るべきである。

今後の展望・リスク要因

ベトナムのライドヘイリング市場は今後数年間で大きな変革期を迎えると予想される。補助金やプロモーション依存から脱却し、価格競争からサービス品質競争へとシフトしていくことが不可避である。これに伴い、プラットフォーム企業は料金体系のさらなる見直しや新たな収益源の開拓を迫られるだろう。

具体的には、サブスクリプション型サービスの導入や法人向けモビリティソリューションの展開が加速する可能性がある。これにより、安定的な収益基盤の確立を目指す動きが市場全体で進むと考えられる。

また、環境規制の強化や消費者の環境意識の高まりを背景に、電動バイクやEV車両の普及が一層進む見通しだ。Xanh SMのような電動バイクサービスの競争力は高まり、GrabやBeも環境対応を強化せざるを得ない状況となる。これにより、モビリティプラットフォーム自体のビジネスモデルが大きく変革する可能性がある。

一方で、リスク要因も存在する。まず、料金上昇に伴う消費者の利用減少リスクがある。ベトナムの消費者は価格感度が高く、急激な料金引き上げは利用頻度の低下や代替交通手段へのシフトを招く恐れがある。また、ドライバー不足や労働環境の改善が進まない場合、サービス品質の低下や運営コストの増大を招き、収益性の悪化につながる可能性もある。

さらに、規制環境の不透明さや行政手続きの複雑さも事業展開の障壁となり得る。特に外国企業に対する規制強化や市場参入制限が強まるリスクには注意が必要だ。

これらのリスクを踏まえつつ、プラットフォーム企業は技術革新やサービス多様化に取り組み、持続可能な競争力の確保を目指すことが求められる。日本企業も規制動向や市場トレンドを注視しながら、現地連携を強化し、リスク管理を含めた戦略的な進出を図るべきである。

総じて、ベトナムのライドヘイリング市場は成熟化の過程にあり、価格競争から収益性重視とサービス品質向上へとシフトすることで、より健全で持続可能な成長が期待される。日本企業にとっても、この変化に適応し、新たなビジネスチャンスを掴むための戦略的な対応が求められる局面である。

出典: Vietnam News / MarketScreener

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