"ベトナム財務省は、電気自動車(EV)に対する自動車登録料(Registration Fee)の免除措置を2030年まで延長する案を国会に提出しました。この政策動向は、単なる環境対策の枠を超え、中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー安全保障戦略と、自国の自動車産業育成という複合的な狙いが込められていま..."
ベトナム財務省は、電気自動車(EV)に対する自動車登録料(Registration Fee)の免除措置を2030年まで延長する案を国会に提出しました。この政策動向は、単なる環境対策の枠を超え、中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー安全保障戦略と、自国の自動車産業育成という複合的な狙いが込められています。
EV優遇税制の現状と延長案のインパクト
ベトナムでは現在、バッテリー式電気自動車(BEV)に対して、購入後3年間の登録料を100%免除し、その後の2年間は内燃機関(ICE)車の50%とする優遇措置が適用されています。この制度は当初の期限が迫っていましたが、財務省の提案により2030年まで延長される公算が大きくなっています。

出所:Vietnam Insight編集部作成
登録料は通常、車両価格の10〜12%を占めるため、この免除措置は消費者にとって極めて強力な購入動機となります。内燃機関車とEVの初期費用の差を埋めることで、EVの普及を強力に後押しする狙いがあります。
[CHART_URL_PLACEHOLDER]
中東戦争と燃料高騰が後押しするEV需要
このEVシフトをさらに加速させているのが、足元の国際情勢です。イラン紛争など中東地域の地政学的リスクが高まる中、国際原油価格は急騰し、ベトナム国内のガソリン価格も上昇圧力を受けています(政府は一時的な燃料税ゼロ措置で対応中)。
このような燃料コストの不確実性は、東南アジア全域で消費者のEVへの関心を高めています。維持費の安さと燃料価格変動リスクの回避という実利的な理由から、EVを選択する層が急増しているのです。ベトナム市場でも、VinFastをはじめとするEVメーカーの販売台数が大きく伸びており、充電インフラの整備も都市部を中心に急速に進んでいます。
外国企業にとってのビジネスチャンスと参入戦略
EV登録料免除の延長は、ベトナムの自動車市場の構造を根本から変える可能性を秘めています。外国企業にとって、これは完成車の輸出だけでなく、EVのエコシステム全体にわたる巨大なビジネスチャンスを意味します。
- 充電インフラとエネルギー管理: 全国的な充電ステーション網の構築、スマートグリッド技術、バッテリーリサイクルソリューションの需要が急拡大しています。
- 部品供給と現地生産: VinFastや中国系EVメーカーの現地生産拡大に伴い、モーター、インバーター、車載ソフトウェアなどのサプライチェーン参入機会が増加しています。
- アフターサービス: EV特有のメンテナンス技術やメカニックの育成、専門のサービスネットワーク構築が急務となっています。
ベトナム政府は、2050年までに国内のすべての車両を電気またはグリーンエネルギーに移行する目標を掲げています。EV優遇税制の延長は、この長期目標に向けた確固たるコミットメントの表れであり、早期に市場参入を果たす企業が将来の主導権を握ることになるでしょう。
充電インフラ整備と今後のロードマップ
EV普及の鍵を握るのが充電インフラの整備です。VinFastは2025年末時点で全国に15万基以上の充電ポートを設置しており、都市部ではコンビニエンスストアやショッピングモールの駐車場にも急速充電器が普及し始めています。政府も2030年までに全国の主要幹線道路沿いに50km間隔で急速充電ステーションを設置する計画を策定しており、長距離移動におけるEVの実用性も大幅に向上する見込みです。さらに、家庭用太陽光発電とEV充電を組み合わせた「V2H(Vehicle to Home)」システムの導入も検討されており、エネルギーの自給自足とEV活用を一体化した次世代のライフスタイルモデルが、ベトナムでも現実味を帯びてきています。



