"JLL Vietnamの最新レポートによると、ホーチミン市中心部(CBD:Central Business District)のGrade A(最高級)オフィス賃料が、1平方メートルあたり月額64.7ドルに達しました。これは前年同期比で1.1%の上昇となります。 この賃料水準により、ホーチミン市は..."
ホーチミン市のオフィス賃料がアジア屈指の高水準に
JLL Vietnamの最新レポートによると、ホーチミン市中心部(CBD:Central Business District)のGrade A(最高級)オフィス賃料が、1平方メートルあたり月額64.7ドルに達しました。これは前年同期比で1.1%の上昇となります。
この賃料水準により、ホーチミン市は香港、シンガポール、ソウル、東京に次いで、アジア太平洋地域で5番目に実質賃料が高いオフィス市場となりました。東南アジアの新興国でありながら、先進国の主要都市と肩を並べるオフィス賃料の高さは、ベトナム経済の力強さと、ホーチミン市へのビジネス集中の度合いを物語っています。
賃料高騰の背景:供給不足と「一等地」へのプレミアム
この賃料高騰の最大の要因は、中心部における「新規供給の圧倒的な不足」です。レポートによれば、中心部では新たなオフィスビルの供給が皆無であるにもかかわらず、既存のビルは着実な吸収率(空室が埋まるペース)を記録し続けています。
需要を牽引しているのは、多国籍企業や急成長する国内のテクノロジー企業、金融機関などです。これらの企業は、優秀な人材の獲得やブランドイメージの向上を目的として、利便性が高くステータスのある中心部のGrade Aオフィスを求めています。
JLL Vietnamのオフィスリース責任者であるWill Tran氏は、「テナントは、優れた立地、アクセスの良さ、そしてブランド・ポジショニングに対してプレミアム(割増料金)を支払う意欲がある」と指摘しています。

中心部と郊外の「2倍の格差」
中心部の賃料が高止まりする一方で、非中心部(郊外)のGrade Aオフィスの平均提示賃料は月額約36ドルにとどまっています。つまり、同じGrade Aのオフィスであっても、中心部と郊外では賃料にほぼ2倍の格差が生じているのです。
この顕著な価格差は、企業に対してオフィス戦略の再考を促しています。コスト削減を重視する企業の中には、中心部から郊外の高品質なオフィスビルへの移転(分散化)を検討する動きも出始めています。
不動産市場の今後の展望と企業へのアドバイス(オピニオン)
ホーチミン市のオフィス市場は、当面の間、貸手市場(オーナー優位)が続くと予想されます。中心部の供給不足が劇的に解消される見込みは薄く、賃料は高止まり、あるいは緩やかに上昇を続ける可能性が高いでしょう。
この状況下で、ベトナムで事業を展開する企業は以下の戦略を検討すべきです。
- ハイブリッド・ワークプレイス戦略: 全従業員を中心部のオフィスに集めるのではなく、中核機能のみを中心部に残し、バックオフィス機能やIT部門などを郊外のオフィスに分散させる「ハブ・アンド・スポーク」モデルの導入が有効です。
- 長期契約によるコスト固定化: 賃料上昇リスクをヘッジするため、可能な限り長期の賃貸借契約を結び、将来のコストを固定化することが財務計画上重要になります。
- サステナビリティ(ESG)の重視: 最近のトレンドとして、環境に配慮したグリーンビルディング認証(LEEDなど)を取得したオフィスへの需要が高まっています。移転を検討する際は、単なるコストだけでなく、ESG要件を満たす物件を選ぶことが、企業の長期的価値向上に繋がります。
ホーチミン市のオフィス市場は、ベトナム経済の「熱気」を最もダイレクトに反映するバロメーターです。この高い賃料水準は、それだけこの都市でビジネスを行うことの価値(リターン)が大きいことの裏返しでもあります。




