"2026年に入り、ベトナム全土の飲食店で値上げの動きが広がっている。食材費・ガス代・物流コストの急騰を受け、フォーやバインミーなどの定番料理が10〜50%値上がりしているケースも。ホーチミン市では路面店の賃料上昇も重なり、特に中小規模の飲食店が経営圧迫を受けている。一方で消費者の節約志向も強まっており、外食産業全体の構造変化が加速している。"
ホーチミン市・ハノイで飲食店の値上げが拡大。食材・ガス・物流コスト急騰で最大50%上昇も
2026年3月19日、ホーチミン市とハノイの多くの飲食店が、原材料費、ガス代、輸送費の高騰を理由に、一斉に値上げに踏み切った。フォーやブンチャーなどの定番料理から、コーヒー、ジュースなどの飲料まで、多くの品目で5,000〜20,000ドン(約30〜120円)の値上げが確認されており、一部の店舗では最大50%の大幅な価格改定も行われている。
背景:止まらないコスト上昇の波
今回の値上げの主な要因は、年初から続く複数回にわたるガソリン価格の引き上げと、それに伴う輸送コストの上昇だ。ホーチミン市ビンタン区のあるフォー専門店の店主は、「ガソリン価格が上がるたびに、食材の仕入れ値も、野菜から肉、調味料まで全てが連動して上昇する。もはや価格を維持するのは不可能だ」と語る [1]。
実際に、多くの店主が、豚肉、牛肉、野菜、麺類などの主要な食材の価格が過去数ヶ月で10〜30%上昇したと証言している。さらに、調理に不可欠なガス代も高騰しており、飲食店の経営を圧迫している。
| 項目 | 影響 | 値上げ幅の例 |
|---|---|---|
| 原材料費 | 豚肉、牛肉、野菜、麺類などが10〜30%上昇 | フォー1杯:5,000〜10,000ドン |
| ガス代 | 調理コストの増加 | ブンチャー1杯:10,000ドン |
| 輸送費 | ガソリン価格高騰による仕入れコスト増 | コーヒー1杯:3,000〜5,000ドン |
| 人件費 | 最低賃金の上昇 | - |
消費者の反応と飲食店の苦悩
突然の値上げに対し、消費者からは戸惑いの声が上がっている。毎日外で昼食をとるという会社員のグエン・ヴァン・A氏は、「毎日の食費が1〜2万ドン増えるだけでも、1ヶ月で考えると大きな負担だ。自炊に切り替えることも検討している」と話す。
一方、飲食店側も苦渋の決断を迫られている。ハノイのあるブンチャー店の店主は、「値上げをすれば客足が遠のくのではないかと不安だが、このままでは赤字が膨らむ一方だ。利益を確保するためではなく、店を存続させるための値上げだ」と理解を求めた [2]。
多くの店では、値上げの理由を丁寧に説明する貼り紙を掲示したり、SNSで告知したりするなど、顧客の理解を得るための努力が見られる。
今後の見通し:価格競争から付加価値競争へ
専門家は、今回の値上げの波は、ベトナムの飲食業界が新たなフェーズに入ったことを示していると分析する。これまでの低価格競争から、品質やサービス、独自のコンセプトで差別化を図る「付加価値競争」への転換が加速するという見方だ。
実際に、一部のカフェやレストランでは、単なる値上げにとどまらず、高品質な豆を使用したスペシャルティコーヒーを提供したり、健康志向のメニューを導入したりするなど、新たな顧客層の開拓に乗り出している。
ガソリン価格の不安定な状況は当面続くとみられており、飲食店の価格戦略は今後も流動的であり続けるだろう。消費者の節約志向と、店の存続をかけた値上げの動きが交錯する中、ベトナムの食文化の現場は大きな転換点を迎えている。
[1] Restaurants and shops are starting to raise prices.
[2] ホーチミン市:多くの飲食店で値上げの動き、ガソリン価格高騰が影響



