"2019年に強化されたベトナム競争法は、カルテルや市場支配的地位の濫用、企業結合を厳しく規制している。違反件数・罰金額ともに増加傾向にあり、ベトナムで事業を行うすべての企業にとって、コンプライアンス体制の構築は不可欠な経営課題となっている。"
ベトナム経済の急速な発展と市場の複雑化に伴い、公正な競争環境を維持するための「競争法」の重要性が増している。2019年に施行された現行の競争法は、規制を大幅に強化し、違反企業に対する罰則も厳格化した。ベトナムで事業を行うすべての企業にとって、競争法コンプライアンスは、もはや無視できない経営課題となっている。

違反件数、罰金総額ともに年々増加傾向にあり、当局の監視が強化されていることがわかる。
競争法の主要な規制内容
ベトナム競争法は、主に以下の3つの行為を規制している。
1. 反競争的な合意(カルテル)
競争を制限する効果を持つ、事業者間の合意を禁止する。具体的には、以下のような行為が典型例だ。
- 価格カルテル: 価格を共同で決定・維持・変更する合意。
- 生産・販売数量の制限: 商品やサービスの供給量を制限する合意。
- 市場分割: 販売地域や顧客を割り振る合意。
- 入札談合: 入札価格や落札者を事前に取り決める合意。
2. 市場支配的地位の濫用
市場で支配的な力を持つ事業者が、その力を不当に利用して競争を阻害する行為を禁止する。市場支配的地位は、市場シェア(単独で30%以上、または複数社で一定以上)などに基づいて判断される。濫用行為の例は以下の通り。
- 不当に低い価格での販売(略奪的価格設定): 競合他社を市場から排除する目的で、原価を割るような価格で商品を販売する。
- 抱き合わせ販売: ある商品を購入する条件として、別の商品も購入させる。
- 取引拒絶: 正当な理由なく、特定の事業者との取引を拒絶する。
3. 経済集中(企業結合)の規制
一定規模以上のM&A(株式取得、合併、資産譲渡など)が、市場の競争を著しく制限する可能性がある場合に、それを規制する。対象となる企業は、事前に競争当局(VCCA: Vietnam Competition and Consumer Authority)に届け出て、承認を得る必要がある。届出が必要となる基準は、当事会社のベトナム国内における総資産、総売上高、取引額などに基づいて定められている。
コンプライアンス体制の構築
競争法違反のリスクを回避するため、企業は以下の対策を講じる必要がある。
- 社内規程の整備: 競争法コンプライアンスに関する明確な社内ルールを策定する。
- 従業員への教育・研修: 営業部門や購買部門など、競合他社と接触する機会の多い従業員を中心に、定期的な研修を実施し、意識向上を図る。
- 相談窓口の設置: 競争法に関する疑問や懸念が生じた際に、従業員が気軽に相談できる法務部門などの窓口を設置する。
- 定期的な監査: 社内の業務プロセスが競争法に準拠しているか、定期的に内部監査を実施する。
ベトナム競争当局(VCCA)は、近年調査能力と執行体制を大幅に強化しており、日系企業も例外ではない。コンプライアンス体制の構築を怠った場合、高額な罰金だけでなく、企業の評判失墜という深刻なダメージを被る可能性があることを、経営者は強く認識する必要がある。
