"ホーチミン市の飲食業界では、2026年に入り本格的な日本食と、日本の食文化が南米のテイストと融合した「ニッケイ料理」がブームに。新規オープンレストランに占める割合は24%へと倍増し、消費者の「本物」や「新しい食体験」への渇望を反映している。"
ホーチミン市の飲食業界は、2026年に入り新たなトレンドの波を迎えている。伝統的なベトナム料理やフレンチに加え、本格的な日本食と、日本の食文化が南米のテイストと融合した「ニッケイ料理」が、美食家たちの注目を一身に集めているのだ。市内の新規オープンレストランの業態別シェアを見ると、2024年には12%だった日本食・ニッケイ料理の割合が、2026年には24%へと倍増。これは、パンデミックを経て消費者の「本物」や「新しい食体験」への渇望が高まっていることの表れと言える。

2024年と2026年の比較。日本食・ニッケイ料理のシェアが倍増していることがわかる。
ニッケイ料理の旗手「Pisco Hana」
このトレンドを象徴するのが、3区にオープンした「Pisco Hana」だ。ペルー出身の日系3世シェフが腕を振るうこの店では、新鮮な魚介を使ったセビーチェに柚子胡椒を効かせたり、アンデスのジャガイモと日本の照り焼きソースを組み合わせたりと、斬新な料理が並ぶ。特に、アルパカの肉を使った串焼き「アンティクーチョ」に味噌ベースのタレを合わせた一品は、多くの食通を唸らせている。客単価は150万VND(約9,000円)からと高価格帯ながら、予約は1ヶ月先まで埋まっているという。
本格江戸前寿司の深化
一方で、伝統的な日本食も深化を続けている。1区の日本人街・レタントン通りから少し離れた場所にオープンした「鮨・匠(Sushi Takumi)」は、豊洲市場から週3回空輸される新鮮なネタと、赤酢を使ったこだわりのシャリで、本格的な江戸前寿司を提供。おまかせコースは300万VND(約18,000円)からと、市内で最も高価な寿司店の一つだが、現地の富裕層や駐在員を中心に絶大な支持を得ている。「本物の味を知る顧客が増えたからこそ、我々も妥協できない」と、店主の日本人シェフは語る。
ビジネスへの示唆
この二極化するトレンドは、ベトナムの飲食市場が成熟期に入り、消費者のニーズが多様化・高度化していることを示している。単に「日本食」というだけでは生き残れず、「ニッケイ料理」のような新しいコンセプトや、「鮨・匠」のような圧倒的な品質といった、明確な付加価値が求められる時代になった。今後ベトナムでの飲食店展開を考える企業は、ターゲット顧客を明確にし、独自の強みを打ち出す戦略が不可欠となるだろう。
