"ベトナム国会常務委員会は、2026年4月16日から6月30日までの期間、ガソリンやディーゼル油など主要燃料に対する環境保護税、特別消費税、および付加価値税(VAT)を実質的にゼロにする決議(Resolution 19/2026/QH16)を承認しました。この異例の措置は、中東情勢の緊迫化、特にイラン..."
ベトナム国会常務委員会は、2026年4月16日から6月30日までの期間、ガソリンやディーゼル油など主要燃料に対する環境保護税、特別消費税、および付加価値税(VAT)を実質的にゼロにする決議(Resolution 19/2026/QH16)を承認しました。この異例の措置は、中東情勢の緊迫化、特にイラン紛争に伴うホルムズ海峡の物流混乱が引き起こした国際原油価格の急騰に対する緊急対応策です。
燃料税免除の全容と背景
今回の措置では、これまで1リットルあたり2,000ドン(約12円)課されていたガソリンの環境保護税がゼロになるほか、航空燃料やマズット油も対象となります。また、特別消費税とVATの免除措置も同時に適用されます。ただし、企業は引き続き仕入VATの控除を受けることが可能であり、サプライチェーン全体でのコスト削減効果が期待されています。

出所:Vietnam Insight編集部作成
背景にあるのは、ホルムズ海峡の封鎖リスクによるグローバルなエネルギー供給網の脆弱性です。ベトナムは国内に製油所を持つものの、原油の多くを輸入に依存しており、国際価格の変動が国内インフレに直結する構造にあります。政府は、燃料価格の高騰が輸送コストや製造コストを押し上げ、ひいてはマクロ経済の安定を脅かすことを強く懸念し、先制的な防衛策に打って出ました。
企業と消費者への波及効果
この免税措置は、特に物流・運輸業界や製造業にとって大きな追い風となります。燃料コストは物流企業の営業費用の30〜40%を占めるため、税負担の軽減は直接的な利益改善に寄与します。また、一般消費者にとっても、インフレ圧力の緩和を通じて購買力の維持につながる重要な施策です。
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一方で、政府の税収減少という副作用も避けられません。財務省の試算によれば、この2ヶ月半の免税措置により、国家予算の歳入は数兆ドン規模で減少する見込みです。しかし、政府は「マクロ経済の安定と企業の事業継続支援が最優先である」との姿勢を鮮明にしており、税収減を補うための歳出削減や他の財源確保策も並行して検討されています。
今後の展望と課題
燃料税ゼロ措置は6月末までの時限的措置ですが、中東情勢の推移によっては延長される可能性も否定できません。ベトナム政府は、国際市場の動向を注視しつつ、必要に応じて機動的な政策対応を行う構えです。外国企業にとっては、ベトナム政府の危機管理能力の高さを示す事例であると同時に、短期的にはコスト削減の好機となります。しかし、中長期的には、化石燃料への依存度を下げるための再生可能エネルギーや電気自動車(EV)への移行戦略が、より一層重要性を増していくでしょう。



