ホーチミン市が5万ヘクタール・105工業団地の開発ロードマップを公表:2028年完了を目指す全体像
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市場分析 2026年4月13日 3分で読めます

ホーチミン市が5万ヘクタール・105工業団地の開発ロードマップを公表:2028年完了を目指す全体像

"2026年4月第2週、ホーチミン市輸出加工区・工業団地管理局(HEPZA)は、市内の工業団地開発に関する包括的なロードマップを公表した。合計105の工業団地で5万ヘクタール以上を開発し、2028年末までにすべての区画計画を完了させるという野心的な計画である。 本稿では、このロードマップの詳細、投資..."

ホーチミン市が5万ヘクタール・105工業団地の開発ロードマップを公表:2028年完了を目指す全体像

2026年4月第2週、ホーチミン市輸出加工区・工業団地管理局(HEPZA)は、市内の工業団地開発に関する包括的なロードマップを公表した。合計105の工業団地で5万ヘクタール以上を開発し、2028年末までにすべての区画計画を完了させるという野心的な計画である。

本稿では、このロードマップの詳細、投資家にとっての意味、そして南部ベトナムの産業構造への影響を分析する。


1. 現状の整理:66団地が設立済み、39団地が計画段階

HEPZAの計画管理部門責任者レ・カック・フアン(Le Khac Huan)氏が記者会見で明らかにしたデータによれば、ホーチミン市の工業団地は以下の3つのカテゴリーに分類される。

稼働中の工業団地は58団地で、総面積は22,410ヘクタールである。これらは既に入居企業を受け入れており、ホーチミン市の製造業の中核を担っている。

準備段階の工業団地は8団地で、約4,860ヘクタールをカバーしている。インフラ整備や法的手続きが進行中であり、近い将来の稼働開始が見込まれている。

計画段階の工業団地は39団地で、23,000ヘクタール以上に及ぶ。この広大な土地は、ホーチミン市がハイテク・持続可能な産業成長へ転換するための戦略的資源と位置付けられている。


2. フェーズ別開発スケジュール

HEPZAは、投資家に明確な法的基盤と即時利用可能な土地を提供するため、段階的な計画策定スケジュールを展開している。

2026年現在: 7団地の区画計画が進行中。さらに8団地が2026年中に計画策定を開始する。

2027年: 10団地の区画計画を策定。

2028年: 4団地の区画計画を完了。

2028年以降: 残り9団地の計画を最終段階で完了。

2028年末までに、ホーチミン市の全工業団地エリアが詳細な区画計画でカバーされ、高品質な投資プロジェクトに対応可能な「クリーンな土地」が確保される計画である。


3. デベロッパー選定基準:4つの柱

インフラ計画と並行して、ホーチミン市は政令35/2022/ND-CPに基づく厳格なデベロッパー選定基準を適用している。選定は以下の4つの柱に基づいて評価される。

能力(Capacity): 不動産事業および土地利用手続きにおける実証された能力。

経験(Experience): 工業団地開発における過去の実績。

技術的専門性(Technical Expertise): インフラ設計・建設に関する技術力。

財務力(Financial Strength): プロジェクトを完遂するための十分な資金力。

このロードマップと選定基準の公開は、競争的かつ透明な環境を醸成することを目的としている。市当局は、これらの措置により、高付加価値のFDIを誘致できる「次世代型」工業団地の開発が促進されると期待している。


4. 南部ベトナムの産業地図への影響

ホーチミン市の工業団地拡大計画は、南部ベトナム全体の産業地図を塗り替える可能性がある。

従来、ホーチミン市周辺の工業団地は、ビンズオン省やドンナイ省に集中していた。これらの省は比較的安価な土地と労働力を武器に、外国製造企業を誘致してきた。しかし、ホーチミン市が5万ヘクタールの工業用地を本格的に開発すれば、市内で完結するサプライチェーンの構築が可能となり、物流コストの削減と生産効率の向上が期待される。

特に注目すべきは、ホーチミン市が「ハイテク・持続可能な産業成長」を明確に打ち出している点である。これは、従来の労働集約型製造業から、半導体、AI、バイオテクノロジーなどの先端産業への転換を意味する。フーミー3特別工業団地(Phu My 3 Specialised Industrial Park)のような既存の成功事例をモデルに、高付加価値産業の集積を目指す方針だ。


5. 投資家にとっての機会とリスク

機会: 5万ヘクタールの新規工業用地は、ベトナムへの製造拠点移転を検討する企業にとって、土地確保の選択肢を大幅に拡大する。特に2026〜2028年の計画策定フェーズでは、早期に参入することで有利な条件での土地取得が可能となる可能性がある。

リスク: 計画の実行には、インフラ整備(道路、電力、上下水道)の遅延リスクが伴う。ベトナムでは、計画と実行の間にギャップが生じることが少なくなく、2028年の完了目標が達成されるかは不透明である。また、大量の工業用地供給は、既存の工業団地の稼働率や賃料に下方圧力を与える可能性がある。


6. 日本企業への実務的アドバイス

ホーチミン市での工業用地取得を検討する日本企業は、以下の点に留意すべきである。

第一に、HEPZAの公式ロードマップを定期的にモニタリングし、ターゲットとする工業団地の計画策定状況を把握すること。第二に、デベロッパー選定プロセスに参画するための現地パートナーとの連携を早期に開始すること。第三に、環境規制やESG要件への対応を事前に準備し、「次世代型」工業団地の入居基準を満たす体制を構築すること。

ホーチミン市の工業団地開発ロードマップは、南部ベトナムの産業発展における新たな章の始まりを告げるものである。

出典: Vietnam Insight

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