"ベトナムで働く外国人労働者にとって、社会保険と福利厚生制度の理解は欠かせない。 2025年7月1日に施行された改正社会保険法により、外国人労働者の社会保険加入が義務化され、制度が大きく変わった。 本記事では、ベトナムの社会保険と福利厚生制度について、最新の情報を詳しく解説する。 ## 改正社会保険法の施行 2024年6月にベトナム国会で承認された改正社会保険法41/2024/QH15が、..."
ベトナムで働く外国人労働者にとって、社会保険と福利厚生制度の理解は欠かせない。
2025年7月1日に施行された改正社会保険法により、外国人労働者の社会保険加入が義務化され、制度が大きく変わった。
本記事では、ベトナムの社会保険と福利厚生制度について、最新の情報を詳しく解説する。
改正社会保険法の施行
2024年6月にベトナム国会で承認された改正社会保険法41/2024/QH15が、2025年7月1日から施行された。
この改正は、社会保険法58/2014/QH13を改正したもので、労働者の権利保護を強化し、社会保障制度を拡充することを目的としている。
改正の背景には、ベトナムの経済成長に伴う労働市場の変化がある。
パートタイム労働者や個人事業主の増加、外国人労働者の流入など、多様な働き方が広がる中で、社会保障制度の拡充が求められていた。
主な改正ポイント
改正社会保険法の主なポイントは、大きく3つだ。
第一に、社会保険加入義務の対象者が拡大された。
第二に、社会保険料の最低納付期間が短縮された。
第三に、社会保険料の滞納と未納に対する罰則が強化された。
社会保険加入義務の対象者拡大
これまで社会保険加入義務がなかったパートタイム労働者も、加入義務の対象となった。
具体的には、1カ月以上の労働契約に基づいてパートタイムで勤務し、月給が社会保険加入要件の最低給与額と同等、またはそれ以上の労働者が対象だ。
また、事業登録を行っている個人事業主や、企業の管理者など、給与を受領しない者についても加入が義務化された。
外国人労働者については、これまでベトナム人配偶者がいる外国人や企業の代表など、労働許可証の取得が免除されていることで社会保険加入が免除されていた者も、改正法では加入義務の対象となった。
ただし、条件として、雇用主と12カ月以上の労働契約を結ぶ場合に限られる。
一方、外国人労働者のうち、社内異動者とベトナムの労働法169条に定める定年退職年齢に達した者は、引き続き加入免除となる。
社会保険料の最低納付期間の短縮
男女ともに退職年金を受給するための社会保険料の最低納付期間が、現行法の20年から15年に短縮された。
この変更により、より多くの労働者が退職年金を受給できるようになることが期待されている。
社会保険料の滞納と未納に対する罰則強化
社会保険料の滞納や支払いを回避する行為が発覚した場合、雇用主に滞納または未納額と加算金を支払うように強制される。
加算金は、延滞保険料額に対して1日当たり0.03%の相当額と延滞日数から算出した額となる。
この罰則強化の背景には、深刻な未納問題がある。
ベトナム社会保険庁によると、2024年12月時点の社会保険の未納総額は16兆ドン(約880億円)以上に達している。
改正法により、社会保険料の徴収・納付を管理するための規定が補完され、未納問題の解決が期待されている。
社会保険の種類と給付内容
ベトナムの社会保険は、4つの主要な給付を提供している。
退職年金
退職年金は、社会保険料の納付期間が15年以上で、定年退職年齢に達した時点で受給対象となる。
現在、定年退職年齢の引き上げが段階的に実施されている。
2025年は、通常の労働条件での定年退職年齢は、男性61歳3カ月、女性56歳8カ月だ。
最終的には、男性62歳(2028年)、女性60歳(2035年)まで引き上げられる。
退職年金の受給額は、納付期間と納付額に基づいて計算される。
長期間にわたり高額の社会保険料を納付した労働者ほど、高額の退職年金を受給できる。
疾病・出産給付
疾病・出産給付は、病気や出産時の医療費や休業補償を提供する。
労働者が病気で休業する場合、社会保険から休業補償が支給される。
出産の場合は、出産前後の休業期間中の給与が補償される。
労働災害・職業病給付
労働災害・職業病給付は、労働災害や職業病による医療費や補償を提供する。
労働災害で負傷した場合、治療費や休業補償が支給される。
職業病と認定された場合も、同様の給付が受けられる。
遺族年金
遺族年金は、被保険者が死亡した場合に遺族へ支給される給付だ。
被保険者の配偶者や子供が、一定の条件を満たす場合に受給できる。
健康保険制度
ベトナムでは、すべての労働者が健康保険に加入する義務がある。
健康保険は、医療費の一部を補償する制度だ。
健康保険に加入することで、病院での診察や治療を受ける際に、医療費の負担が軽減される。
健康保険料の負担
健康保険料は、雇用主と労働者が分担して負担する。
雇用主は給与の3%、労働者は給与の1.5%を負担する。
2024年7月1日より、公務員の最低賃金が2,340,000VNDに引き上げられたことに伴い、健康保険料の上限額も引き上げられた。
社会保険料の負担割合
ベトナムの社会保険料は、雇用主と労働者が分担して負担する。
雇用主の負担は、社会保険料が給与の17.5%、健康保険料が給与の3%、失業保険料が給与の1%で、合計で給与の21.5%だ。
労働者の負担は、社会保険料が給与の8%、健康保険料が給与の1.5%、失業保険料が給与の1%で、合計で給与の10.5%だ。
この負担割合は、ベトナムの法律で定められており、すべての企業と労働者に適用される。
外国人労働者の社会保険
2025年7月1日以降、12カ月以上の労働契約を結ぶ外国人労働者は、社会保険に加入する義務がある。
これは、改正社会保険法により新たに導入された規定だ。
外国人労働者の加入義務
外国人労働者が社会保険に加入する条件は、雇用主と12カ月以上の労働契約を結ぶことだ。
短期契約(12カ月未満)の外国人労働者は、加入義務がない。
また、社内異動者とベトナムの労働法169条に定める定年退職年齢に達した者は、加入免除となる。
一時金の受給
外国人労働者は、ベトナムを離れる際に社会保険の一時金を請求できる。
一時金は、納付した社会保険料の一部を受け取ることができる制度だ。
具体的な金額は、納付期間と納付額に基づいて計算される。
加入のメリット
外国人労働者が社会保険に加入するメリットは、いくつかある。
まず、退職年金の受給資格を得られる。
長期間ベトナムで働く場合、退職後に年金を受給できる可能性がある。
次に、疾病・出産給付を受けられる。
病気や出産時に、医療費や休業補償を受けることができる。
また、労働災害・職業病給付を受けられる。
労働災害で負傷した場合、治療費や補償を受けることができる。
福利厚生制度
ベトナムの企業は、法定福利厚生に加えて、任意福利厚生を提供している。
法定福利厚生
法定福利厚生は、ベトナムの法律で義務付けられている福利厚生だ。
社会保険、健康保険、失業保険、有給休暇、年次ボーナス(テトボーナス)などが含まれる。
有給休暇は、勤続1年以上の労働者に年間12日間付与される。
年次ボーナス(テトボーナス)は、旧正月(テト)前に支給されるボーナスで、通常は1カ月分の給与に相当する。
任意福利厚生
任意福利厚生は、企業が独自に提供する福利厚生だ。
交通費補助、食事補助、住宅手当、家族手当、教育訓練支援、健康診断、レクリエーション活動などが含まれる。
これらの福利厚生は、企業によって内容が異なる。
外資系企業や大手企業は、充実した福利厚生を提供している場合が多い。
企業への影響と対応
改正社会保険法の施行により、企業は対応が必要となる。
労働契約の見直し
パートタイム労働者や個人事業主との契約内容を確認し、社会保険加入義務の対象者を特定する必要がある。
対象者には、社会保険加入の手続きを行う。
外国人労働者の社会保険加入手続き
12カ月以上の労働契約を結ぶ外国人労働者の社会保険加入手続きを実施する必要がある。
加入免除対象者を確認し、適切に対応する。
社会保険料の滞納防止
社会保険料の納付管理を徹底し、滞納や未納を防止するための内部管理体制を構築する必要がある。
滞納や未納が発覚した場合、高額の加算金が課されるため、注意が必要だ。
定年制度の見直し
定年退職年齢の引き上げに伴い、定年制度や福利厚生の見直しを検討する必要がある。
従業員に対して、定年退職年齢の変更について説明を行うことも重要だ。
社会保険制度の課題
ベトナムの社会保険制度には、いくつかの課題がある。
実際の収入より低い保険料納付
43.1%の労働者が、実際の収入より低い固定給与に基づいて社会保険料を納付している。
最低賃金をわずかに上回る水準で納付しているケースが多く、将来の年金受給額に影響する。
この問題は、企業が社会保険料の負担を軽減するために、実際の給与より低い金額で申告しているためだ。
社会保険料の未納問題
2024年12月時点で、社会保険の未納総額は16兆ドン以上に達している。
改正法により罰則が強化されたが、未納問題の解決には時間がかかると予想される。
自営業者の加入率の低さ
自営業者や個人事業主の社会保険加入率が低い。
改正法により加入義務化が進むことが期待されるが、自営業者への周知と加入促進が課題だ。
2026年の社会保険政策の目標
ベトナム社会保険庁は、2026年の社会保険政策の目標を発表している。
社会保障政策の適用範囲を拡大し、社会保険加入者数のさらなる増加を目指している。
2025年末時点で、社会保険加入者数は2,153万人に達し、2024年比で167万人増加した。
2026年は、さらなる増加を目指している。
また、未納問題の解決に向けた取り組みを強化している。
テト2026に向けた特別措置として、首相の指示により、年金と社会保険給付の2ヶ月分を前払いし、労働者の生活支援を強化している。
まとめ
2025年7月1日に施行された改正社会保険法は、ベトナムの社会保障制度を一段階成熟させる大きな改革だ。
パートタイム労働者、個人事業主、外国人労働者など、これまで加入義務がなかった対象者にも社会保険加入が義務化され、労働者の権利保護が強化された。
企業は、労働契約の見直しや社会保険料の納付管理の徹底など、改正法への対応が求められる。
外国人労働者にとっても、社会保険への加入は重要だ。
退職年金、疾病・出産給付、労働災害・職業病給付など、さまざまな給付を受けることができる。
ベトナムで長期的に働くことを検討している場合は、社会保険制度を理解し、適切に加入することが重要だ。
本記事で紹介した情報を参考に、ベトナムの社会保険と福利厚生制度について理解を深めてほしい。



