"ベトナムとロシア国営ロスアトムは3月30日、ニン・トゥアン1号原子力発電所建設の協力協定に署名。2016年に中断したプロジェクトを再始動させ、2031年の稼働を目指す。ベトナムのエネルギー安全保障とカーボンニュートラル目標達成に向けた重要な一歩となる。"
ベトナム政府とロシア国営原子力企業ロスアトムは2026年3月30日、ベトナム初となるニン・トゥアン1号原子力発電所の建設に向けた協力協定に署名した。この協定は、2016年に一度中断された同プロジェクトを再始動させるための重要な一歩であり、ベトナムのエネルギー安全保障と2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた動きを加速させるものだ。

急増する電力需要を賄うため、2030年以降、原子力が重要な役割を担う計画。
プロジェクトの背景と概要
ニン・トゥアン1号原発プロジェクトは、もともと2009年に計画が承認されたが、福島の事故や財政的な問題から2016年に棚上げとなっていた。しかし、近年の急速な経済成長に伴う電力需要の逼迫を受け、政府は「第8次国家電力開発計画(PDP8)」の中で、2030年までに2,400MWの原子力発電を導入する方針を明記。今回の協定は、この計画を具体化するものだ。計画では、ロスアトムが最新のVVER-1200型加圧水型原子炉2基(合計2,400MW)を建設し、技術移転や人材育成も包括的に支援する。建設地は、ベトナム中南部のニン・トゥアン省が予定されている。
スケジュールと課題
協定に基づき、両国は今後1ヶ月以内に詳細な実現可能性調査を完了させ、2028年の建設開始、2031年末の1号機稼働を目指す。しかし、プロジェクトの実現にはいくつかの課題も残る。総事業費は100億ドル以上と見積もられており、その資金調達スキームはまだ確定していない。また、原子力発電所の建設と運営には、高度な技術力と厳格な安全管理体制が不可欠であり、ベトナム国内の法整備や規制当局の能力強化も急務となる。
地政学的・経済的意義
このプロジェクトは、ベトナムにとって単なるエネルギー問題に留まらない。伝統的な友好国であるロシアとの関係を強化する地政学的な意味合いを持つと同時に、再生可能エネルギーへの移行期における安定的なベースロード電源を確保し、産業競争力を維持するための重要な経済政策でもある。プロジェクトが計画通りに進めば、ベトナムは東南アジアで初めて本格的な商業用原子力発電所を運営する国の一つとなり、地域のエネルギー地図を大きく塗り替える可能性がある。



