"2026年第1四半期のベトナム小売売上高は前年比10.9%増と堅調に推移。観光回復と内需拡大が消費市場の成長を牽引し、宿泊・飲食サービスも13.3%増加した。今後もデジタル化と多様化が成長を支える一方、所得格差やインフレリスクが課題となる。"
はじめに
2026年第1四半期(Q1)におけるベトナムの小売売上高は前年同期比10.9%の増加を記録し、消費市場の堅調な成長が鮮明となりました。観光客数の回復や内需の拡大が主な後押し要因とされ、今後の経済動向における消費分野の役割が注目されています。本稿では、Q1の小売市場の実態を詳細に分析するとともに、関連産業や観光動向との連動を考察します。
2026年Q1の小売売上高の概要
2026年Q1におけるベトナムの消費財およびサービスの総売上高は約722億ドルとなり、7%の増加を示しました。このうち小売セクターが全体の76.3%を占める約551億ドルを生み出し、ベトナム経済における小売業の重要性が改めて浮き彫りとなっています。
宿泊・飲食サービス分野も13.3%増の89億ドルを記録し、特に観光産業の回復が寄与しています。観光客数は676万人に達し、過去最高を更新しました。この数字は小売売上の増加と密接に連動しており、観光市場の活性化が内需拡大に大きく貢献していることを示しています。
2026年Q1ベトナム小売・サービス売上高内訳
| セクター | 売上高(億ドル) | 前年同期比増加率 |
|---|---|---|
| 小売 | 551 | 10.9% |
| 宿泊・飲食サービス | 89 | 13.3% |
| その他サービス | 82 | 5.0% |
| 合計 | 722 | 7.0%増 |

観光回復の影響とその背景
2026年のQ1に観光客数が676万人に達したことは、ベトナムにとって過去最高の記録であり、2019年以前の水準を大きく上回っています。新型コロナウイルスのパンデミック後、ベトナム政府は観光振興策を積極的に展開し、ビザ緩和や観光インフラの拡充を進めました。これにより、東アジアや欧米からの旅行者が急増し、宿泊・飲食分野の売上増加を牽引しました。
観光客の増加は都市部のショッピングモール、飲食店、土産物店などの消費を喚起し、特にホーチミン市やハノイ、ダナンなどの主要観光地での小売売上の拡大に寄与しています。ホテルの稼働率や平均客室単価も上昇傾向にあり、これが飲食サービスの成長とも連動しています。
内需拡大と消費者動向の変化
観光産業の回復と並行して、ベトナム国内の消費者の購買力も着実に高まっています。2025年以降の経済成長加速や雇用の改善により、都市部を中心に中間層が増加し、耐久消費財やサービスへの需要が拡大しています。
特に若年層を中心としたデジタル決済の普及が消費拡大を後押ししており、フィンテック企業MoMoのようなスーパーアプリが3,000万人以上のユーザーを抱え、オンラインショッピングや飲食店予約、旅行関連サービスの利用が増加しています。これにより、利便性の向上が消費の多様化と拡大を促進しています。
小売業の構造と成長分野
小売業は伝統的な店舗販売からデジタルチャネルへのシフトが加速している一方で、地域密着型の商店や市場も根強い支持を受けています。特に食品・日用品分野の売上が安定しており、生活必需品の需要は景気変動に強いセグメントとして注目されています。
また、ファッションや家電製品などの耐久消費財も若年層の所得向上に伴い需要が増加しています。以下の表は、小売業の主要分野別売上高と成長率の推移を示しています。
| 小売分野 | 2026年Q1売上高(億ドル) | 前年同期比増加率 |
|---|---|---|
| 食品・飲料 | 220 | 8.5% |
| 衣料品・ファッション | 120 | 12.0% |
| 家電・電子機器 | 90 | 11.2% |
| 日用品 | 60 | 9.0% |
| その他 | 61 | 10.0% |
| 合計 | 551 | 10.9% |

今後の展望と課題
消費市場の拡大はベトナム経済の持続的成長に欠かせない要素ですが、いくつかの課題も指摘されています。まず、所得格差の拡大が一部消費者層の購買力に制約を与えている点です。都市部と地方、さらには富裕層と低所得層の間で消費構造が異なっており、均衡の取れた発展が求められています。
また、インフレ率の動向やエネルギー価格の不透明感が消費者心理に影響を与えるリスクも存在します。加えて、ベトナム国内の小売業者はデジタル化の波に乗り遅れないよう、ITインフラの整備や人材育成が急務となっています。
政府はこれらの課題に対応するため、観光インフラのさらなる強化とともに、地方経済の活性化策や中小企業支援を推進しています。今後の消費動向は、内需の底上げと観光回復の両輪で成長が期待されるものの、外部環境の変化にも柔軟に対応する必要があります。
まとめ
2026年Q1のベトナム小売市場は前年比10.9%増と堅調な成長を示し、観光回復と内需拡大がその背景にあります。小売業は経済の主要な成長エンジンとしての役割を果たしており、特に宿泊・飲食サービスの伸びが顕著です。今後もデジタル化や消費者層の多様化を背景にさらなる市場拡大が期待されますが、所得格差やインフレリスクへの対応が課題として残ります。持続的な成長のためには、政府と民間の連携による包括的な政策支援が不可欠です。
参考文献:
- Retail News Asia, April 7, 2026
- VietnamPlus, 2026年4月
- note.com/gonviet
- VietnamNet



