"Knight Frank・Savills・CBREの調査によると、ベトナムの工業不動産市場は「選別的成長フェーズ」に入っている。南部は稼働率90%超・賃料174ドル/㎡で安定、北部はハイフォン〜バクニン回廊を中心に半導体・電子機器・デジタル技術産業が急拡大。2026〜2027年に140万㎡超の新規倉庫スペースが市場に供給される見込み。"
ベトナム工業不動産、FDI・高技術・ESGが市場を「選別的成長フェーズ」へ
概要
ベトナムの工業不動産市場は2026年、FDIの流入継続・高技術産業へのシフト・ESG要件の高まりを背景に「選別的成長フェーズ」に入っている。Knight Frank・Savills・CBREなどの調査によると、インフラが整備された工業団地と競争力に欠けるプロジェクトの間で明確な差別化が進んでおり、半導体・データセンター・EV関連企業が新たな主要テナントとして台頭している。
詳細
Knight FrankのQ4/2025レポートによると、ベトナムの工業用地市場は南北で明確な二極化が見られる。
南部は規模・賃料水準ともにリードしており、平均賃料は約174ドル/㎡/リース期間、稼働率は90%超を維持している。ただし、2025年後半は新規供給がほぼゼロとなり、投資家はロンアン・バリア=ブンタウ・ドンナイなどの周辺エリアへの展開を余儀なくされている。
一方、北部は賃料水準こそ低い(約137ドル/㎡/リース期間)ものの、高技術資本の誘致先として急速に台頭している。2025年後半の工業用地吸収面積は192ヘクタールと南部を上回り、電子機器・半導体・デジタル技術産業の拡大が牽引した。ハイフォン〜バクニン回廊は北部の新たなハイテク工業回廊として形成されつつあり、2026〜2027年に3,000ヘクタール超の新規供給が見込まれている。

レディービルト工場・倉庫セグメントでは、2025年の総吸収面積が84万㎡超に達し、南北ともに稼働率は90%超を維持。北部では多層工場モデルが土地不足への対応策として登場し始めている。倉庫セグメントではeコマースと3PL(第三者物流)が主要な需要ドライバーとなっており、2026〜2027年に140万㎡超の新規倉庫スペースが市場に供給される見込みだ。
背景
ベトナムの工業不動産市場を牽引する最大の要因は、「China+1」戦略の継続的な恩恵だ。米中貿易摩擦を背景に、製造拠点の多様化を図るグローバル企業がベトナムへの移転・拡張を加速している。
加えて、半導体・データセンター・AI・バッテリー・EV関連企業が新たな主要テナントとして台頭しており、従来の労働集約型製造から高付加価値・高技術産業へのシフトが鮮明だ。Savills World Researchは、2026年の世界不動産投資取引総額が1兆ドルを超える可能性があると予測しており、ベトナムへの投資流入も継続が見込まれる。
考察
工業不動産市場の「選別的成長」は、単純な量的拡大から質的転換への移行を意味する。ESG基準・スマートインフラ・グリーンエネルギーへの対応が、テナント誘致の新たな競争軸となっている。
ドンナイ省のKN Holdingsが進める「Bau Can - Tan Hiep」プロジェクト(約1,000ヘクタール、2026〜2030年に150〜200億ドルのFDI誘致目標)や、ハノイのFPTが提案するデジタル・複合技術パーク(約200ヘクタール、総投資額537億ドル相当)など、工業・技術・都市機能を統合した次世代型プロジェクトが市場の方向性を示している。
まとめ
ベトナムの工業不動産市場は、FDI・高技術・ESGという三つの力学によって選別的成長フェーズに移行している。高技術・ESG対応・現代的ロジスティクスを備えた工業団地が投資を集める一方、差別化が不十分なプロジェクトは供給過剰と低流動性のリスクに直面する。



