"ベトナムで事業を展開する外資企業にとって、銀行口座の開設は市場進出の最初のステップです。本記事では、法人口座開設の手続き、必要書類、主要銀行の選択、資金管理の注意点について詳しく解説します。"
ベトナムで事業を展開する外資企業にとって、銀行口座の開設は市場進出における最初の重要なステップです。適切な銀行口座を開設することで、取引先との決済、従業員への給与支払い、税金の納付など、ビジネス活動をスムーズに進めることができます。本記事では、ベトナムでの銀行口座開設の手続き、必要書類、主要銀行の選択、資金管理の注意点について詳しく解説します。
銀行口座開設の基本要件
ベトナムで法人銀行口座を開設するには、まず国内に法人を設立する必要があります。ほぼすべてのケースにおいて、ベトナム国内に登記された法人がなければ、法人銀行口座を開設することはできません。これには、外国直接投資(FDI)企業、駐在員事務所、支店などが含まれます。
法人口座を開設するための基本的な要件は以下の通りです:
- 法人登記証明書(ERC): ベトナムで法人を設立した際に発行される証明書のコピーが必要です。
- 投資登録証明書(IRC): FDI企業の場合、投資登録証明書のコピーが必要です。
- 定款: 会社の定款のコピーが必要です。
- 法定代表者の身分証明書: パスポートまたは国民IDカードのコピーが必要です。
- 事業所の賃貸契約書: 事業所の住所を証明する賃貸契約書のコピーが必要です。
- 税務登録証明書: 税務当局から発行される税務登録証明書のコピーが必要です。
銀行によっては、追加の書類を要求する場合があります。また、書類はすべてベトナム語に翻訳され、公証される必要があります。
口座の種類
ベトナムで開設できる法人銀行口座には、主に以下の2種類があります:
1. ベトナムドン(VND)口座
ベトナムドン口座は、国内取引、従業員への給与支払い、税金の納付などに使用されます。ほとんどの外資企業は、ベトナムドン口座を開設する必要があります。
2. 外貨口座
外貨口座は、海外の取引先との決済、輸出入取引、外国からの投資資金の受け取りなどに使用されます。外貨口座は、米ドル、ユーロ、日本円などの主要通貨で開設できます。
外国投資家がベトナム市場に参入し、利益を本国に送金する場合、外貨銀行口座を開設する必要があります。外貨口座の開設と使用は、ベトナム中央銀行(SBV)の通達第20/2015/TT-NHNNによって規定されています。
主要銀行の選択
ベトナムには、国内銀行と外資系銀行の両方が存在します。外資企業が銀行を選択する際には、以下の要素を考慮する必要があります:
国内銀行
- Vietcombank(ベトナム外商銀行): ベトナム最大の国有銀行の一つで、全国に広範なネットワークを持っています。
- BIDV(ベトナム投資開発銀行): 国有銀行で、インフラプロジェクトへの融資に強みがあります。
- Techcombank(ベトナム技術商業銀行): 民間銀行で、デジタルバンキングサービスに優れています。
- VPBank(ベトナム繁栄商業銀行): 民間銀行で、中小企業向けサービスに強みがあります。
外資系銀行
- HSBC: 世界的な銀行ネットワークを持ち、国際取引に強みがあります。
- Standard Chartered: アジア市場に強く、貿易金融サービスに優れています。
- ANZ: オーストラリア系銀行で、外資企業向けサービスに定評があります。
- Citibank: 米国系銀行で、グローバルな資金管理サービスを提供しています。
銀行を選択する際には、手数料、サービスの質、英語対応、オンラインバンキングの利便性などを比較検討することが重要です。
口座開設の手順
銀行口座開設の一般的な手順は以下の通りです:
- 銀行の選択: 上記の要素を考慮して、適切な銀行を選択します。
- 書類の準備: 必要書類を準備し、ベトナム語に翻訳・公証します。
- 銀行への申請: 選択した銀行の支店を訪問し、口座開設申請書を提出します。
- 審査: 銀行が書類を審査し、必要に応じて追加書類を要求します。
- 口座開設: 審査が完了すると、口座が開設され、口座番号とオンラインバンキングのアクセス情報が提供されます。
口座開設には通常1〜2週間かかりますが、銀行や書類の準備状況によってはさらに時間がかかる場合があります。
資金管理の注意点
ベトナムでの資金管理には、以下の注意点があります:
1. 外貨規制
ベトナムには外貨規制があり、外貨の流入・流出には一定の制限があります。特に、利益の送金には税務監査が必要であり、年に一度しか送金できません。
2. キャッシュレス決済の推進
ベトナム政府は、キャッシュレス決済を推進しており、2024年7月に施行された政令第52号により、決済口座の開設と使用、キャッシュレス決済サービス、仲介決済サービスに関する規制が強化されました。
3. 大口送金の規制
2025年11月1日から施行されたベトナム中央銀行の通達第27/2025/TT-NHNNにより、大口送金に関する新しい規制が導入されました。一定額以上の送金には、追加の書類提出が必要となります。
4. 海外口座開設の制限
ベトナム法人がベトナム国外に銀行口座を開設するには、一定の要件のもと中央銀行の許可証が必要です。これは、資金の流出を管理するための措置です。
5. 監査要件
ベトナムでは、すべての法人が年次財務監査を受ける必要があります。監査報告書は、利益の送金や税務申告に必要です。
2026年の最新動向
2026年、ベトナムは外国為替規制を一部緩和し、国際金融センター(IFC)の運営を促進しています。2026年1月23日に発表された新しい規制により、IFC内でのオフショア送金が一定の条件下で許可されるようになりました。ただし、オフショア送金は外国為替監督委員会が定める送金基準に従う必要があります。
また、ベトナムが2026年9月に新興市場に昇格することで、外国投資が増加し、金融市場がさらに活性化すると期待されています。これにより、銀行サービスの質も向上し、外資企業にとってより便利な環境が整うでしょう。
まとめ
ベトナムでの銀行口座開設は、外資企業にとって市場進出の重要なステップです。適切な銀行を選択し、必要書類を準備し、規制を遵守することで、スムーズに口座を開設し、効率的な資金管理を行うことができます。ベトナムの金融環境は急速に発展しており、外資企業にとってますます魅力的な市場となっています。



