"ベトナムが、FTSEラッセルの「フロンティア市場」から「セカンダリー新興国市場」への格上げ実現に向けて、最終段階に入っています。長年の課題であった取引前の100%資金準備義務(プレファンディング要件)の撤廃が決定的な一歩となり、格上げが実現すれば、30億から50億米ドルの海外資金が流入すると見込まれています。"
新興国市場への扉を開く規制緩和
ベトナムの株式市場が、国際的な地位を大きく向上させる歴史的な転換点を迎えようとしています。2026年2月4日に公布された通達08号(Circular 08/2026/TT-BTC)により、外国人投資家にとって最大の参入障壁とされてきたプレファンディング要件が撤廃されたことで、FTSEラッセルによる「セカンダリー新興国市場」への格上げが、いよいよ現実味を帯びてきました。 [1]
このプレファンディング要件は、海外の機関投資家がベトナム株を取引する際に、注文前に売買代金の100%を国内口座に準備することを義務付けるもので、国際標準から乖離したこの制度が、これまで格上げを見送る主な理由とされてきました。今回の要件撤廃は、ベトナム市場が国際的な投資プラットフォームと完全に統合されるための最後のピースを埋めるものと評価されています。
格上げがもたらす経済的インパクト
FTSEラッセルの新興国市場インデックスへの組み入れは、単なるステータスの向上以上の意味を持ちます。新興国市場インデックスをベンチマークとする世界の投資ファンドは、数兆ドル規模の資産を運用しており、ベトナムがその構成銘柄となれば、機械的な買い需要が発生します。
アナリストは、この格上げによってベトナム市場に流入する海外ポートフォリオ資金は、**30億ドルから50億ドル(約4500億円〜7500億円)**に達する可能性があると予測しています。 [1] この規模の資金流入は、市場の流動性を飛躍的に高め、ベトナム企業の資金調達環境を改善し、ひいては経済全体の成長を後押しすることが期待されます。
ベトナム株式市場の現状(2026年3月時点)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 市場時価総額 | 3,500億米ドル超 |
| 対GDP比 | 約70-75% |
| 上場証券数 | 1,600以上(HOSE & HNX) |
| 外国人保有比率(HOSE) | 約14-16% |
出典: ASEAN Briefing [1]
今後の展望と残された課題
次回のFTSEによる市場分類レビューは、2026年9月に予定されています。今回の規制改革を受け、市場関係者の間では、このレビューでベトナムの格上げが正式に決定されるとの期待が非常に高まっています。
しかし、課題が全て解消されたわけではありません。特に、**外資による出資比率の上限(Foreign Ownership Limit, FOL)**は依然として残っています。銀行など特定の戦略的分野では、外資の保有比率が30%〜49%に制限されており、人気銘柄ではこの上限に達して外国人投資家が追加投資できない「満杯」状態が続いています。この問題の解決が、ベトナム市場が真にグローバルな資本市場へと飛躍するための次のステップとなるでしょう。
とはいえ、プレファンディング要件の撤廃は、ベトナムが長年かけて進めてきた市場開放努力の集大成であり、そのインパクトは計り知れません。今後、ベトナム株式市場は、世界中の投資家からこれまで以上に熱い視線を集めることになりそうです。
参照資料:
[1] ASEAN Briefing. (2026, March 10). Vietnam Eases Foreign Access to Equities Under New 2026 Rules. https://www.aseanbriefing.com/news/vietnam-eases-foreign-access-to-equities-what-the-new-rules-mean-for-global-investors/



